福祉広場だより 寄稿文2007年1月23日
我が家の部屋はそんなに本がありません。唯一ある棚の3分の2は30代から40台後半までの作家たちの本が占有し、残りの部分を占めるのが障害分野に関わる本です
昨年はひたすらに走って考え、考えながら走って、を繰り返していたように思います。いつの間にこんなことを会得したのか我ながらに記憶がないのですが、何らかの運動というものを実践していくうえで必要な技術なのでしょうか。若かりし頃某受験校に通っていたある日、めっぽう綺麗な女性の講師が「君たちは勉強のための勉強をしているの?それとも職業選択のための勉強をしているの?」と放った言葉を妙に懐かしく感じたのは昨年末になります
今年の目標は学ぶことに。自然界の法則とか、社会の仕組みとか、ある意味完成されたものを所与の事実としておこなう学びには、ことの本質を掴むための知識と、本質を理解し合うための知識を獲得していくことにあり、その先に待つのは自己実現の確認であろうと思います
あらゆる分野の方々とお付き合いしているとうれしいこともあります。昨年一冊の本を頂きました。現代障害者福祉論と題される本で、この編集には障害者自立支援法の動向が踏まえられているのでまさに今をときめくテキストだろうと思います。少しずつ読み進めていくと、こんな人のこんな言葉が記してあります。障害児教育の分野では有名であろう糸賀一雄さんは、(生産性や効率性が優位なこの時代で)障害児は誰と取り替えることのできない個性的な自己実現をしているのであり、その自己実現こそが創造であり、生産である、と述べています
生活保護の問題、介護保険の問題、非正規雇用の問題、本当のところで人が大切にされない事態が続いています。それは人が再生していったり、生をまっとうしたり、物を作ったり人を接客する喜びを失わせる事態で、まさにこの国を創造する力、生産する力が奪われる事態だともいえます
糸賀さんが障害児教育をとおして指摘したものは、社会全体をおおう不正を押し返すたしかな重みがあるのではないだろうか、そんな考えがよぎります。