応益負担に反対する実行委員会呼びかけ文(案)2007年10月
2006年は障害者福祉にとって激動の年となりました。本人の所得に関係なく、本人がサービスを使った分だけ一律に負担する仕組み、いわゆる応益負担を導入した障害者自立支援法が施行されたからです。
この法律は、障害を持っていても人間としてあたりまえに地域社会の中で暮らすことを可能とするようなものではなく、その障害を本人の努力によって克服することこそが自立だと捉えています。つまり、身体的にも自立できない障害者、経済的にも自立できない障害者は社会とはかけ離れた場所でしか生きられないことになります。
私たちは、この法律が策定され成立する過程の中で一貫して応益負担を持ち込ませないための活動をしてきました。それは、障害を持っていても人間として生きるために必要な行為(ごはんを食べる、トイレに行く、風呂に入る、布団に寝るなど)は利益ではなく権利であるという捉え方をしているからです。これは、社会福祉の大原則を踏まえた道理ある活動だと信じているからです。
しかし、現在この国がもうけばかりを優先するあまり何も生み出さない、ムダな投資にはいっさい無頓着で、それが福祉を食い物にする事態ともなっています。福祉施設職員や介助に従事する労働者に対する賃金の抑制が進み、働きにくい環境が一層強くなってきました。そもそもサービスの報酬単価が低く設定されているため慢性的な人材不足であり過密労働にならざるを得ず、本人が生計を立てるのに精一杯であるというのが現状です。
こうした、障害者福祉の問題は、いまこの国が推し進める社会保障費を含む歳出の削減を徹底してやっていく方向に沿ったものではないでしょうか。しかも、あたりまえの暮らしができない、暮らせるだけのお金がない、そういった事態は障害者福祉の分野に留まるものではないと思います。生活保護の申請拒否、介護保険の実費負担、非正規雇用の劣悪な労働実態など、これら社会問題とされる事態に繋がることは「人としての尊厳」をないがしろにするという根本的な問題に突き当たらざるを得ないとも思います。
折しも、近年の障害者福祉の問題は、いまこの国に内在する問題の一端であり、その当事者活動もまた他の分野にまたがる社会問題との連携と連帯を必要とする時期に来ているのかも知れません。なぜなら、人が人として生きることさえ守れない、人が人として再生していく過程も無慈悲に踏みにじる実態を目の当たりにしてきたからです。
より良く生きていきたいと願う私たちだからこそできることがあります。人としての尊厳を守るためにご一緒に声を上げていきませんか。すべての人に向けてアピールします。
以上
応益負担に反対する実行委員会一同