ひゅうまん京都 寄稿文2006年9月

痛みすら、ともない

岡田健司


夏が終わった−

  自立支援法の本格的実施が迫ってきました。みなさんもそうだと思いますが、私たちの生活では7月の認定調査を経て、今後ようやく市町村審査会での決定があり、京都市(あるいは国)の支給量にもとづいて、サービス受給が始まるという段階です。

  先日、奈良で行われた学習会にいきました。認定調査と上限問題についてお話をするという機会をいただき、あくまでも障害程度区分は勘案事項に過ぎない。だから一人ひとりの障害者の実態に合わせた支給量を市が決めること。その措置として、区分間流用(他の区分で支給したものを使う)を活用して、従前額保障(単費でがんばった分を実績として国庫補助が受けれる)を実施していくこと。その際、障害福祉計画で障害者が自立した生活ができるための施策を計画することが肝心だ、というようなことを指摘させてもらいました。

  そんな奈良といえば、昨年からの全国大行動でひと際目立ったのが知的障害者団体としてのピープルファースト奈良で、彼ら彼女らはいつもいつも元気で、ともに行動してきた仲間たち。彼らが会場から発言します。認定調査はできる/できないばっかりを聞く。料理ができないと答えれば、親にも何でできないのって言われるし、これからもできないと思う。そういう彼女に対して、司会者の人は認定調査の画一的な聞き方が問題だということでしょうね。そう言っていた。「それで収まりきらないから障害なんだよ。」と一人ごちるのです。

  さて、実際これからの問題として、在宅障害者にとっては障害程度区分が日常生活全般のサービスを受けられなくするんじゃないかとの懸念がずっとありました。例えば、支援費では日常生活支援というものがあって、家事も移動も含まれたサービス内容は四肢機能障害1級の人を対象に使われていたけれど、自立支援法では重度訪問介護という名前に変わり、程度区分4以上および二肢以上のマヒの人が対象です。しかし、脳性マヒの障害を持っている人は歩くことができる場合が多く、「歩行」「移乗」「排尿」「排便」ができるとすれば程度区分でアウトなんです。そんな問題があり、いずれにしても受けられないだろう人が多くでることが目に見えていたので、8月23日に行われた(障害分野の)主管課長会議で、重度訪問介護が受けれらない人であっても程度区分が3以上で、なおかつ現在日常生活支援と外出介護をあわせて125時間を越える人は、重度訪問介護を利用できるとする措置が講じられたのでした。これには驚きで、やるせなさが少し解消です。

  本格的実施1ヵ月。各地で施設系の軽減策の実施がおこっています。大分や旭川です。京都では地域生活支援事業の一部無料化を実現させました。大分の「あくまで働く場所」だということを高らかと叫んでいます。ご存知だと思いますが、井上吉郎さんが脳梗塞のため入院中です。個人的な見舞いはできません。しかし10月1日京都アスニーで行われるシンポジウムのことが頭をよぎり、無理を押して面会に向かいました。その日の新聞に大分の記事が載っていたのです。「かっこいいぞ、大分」と思わず叫びます。障害者の経済的自立が送れるような職場となることを祈っています。

  18年前、湾曲した背骨の固定手術をした際に気管切開をし、人工呼吸器をつける生活を続けてきました。2週間に及ぶICUでの生活はほとんど朦朧としていました。無意識下であいさつをかわし、人を呼び、うすら目の奥に人影が見えると安心した記憶が浮かびます。2週間ぶりに食べたもの、それはヨーグルトでした。鮮明に覚えています。おいしかった。


−再生の記憶が重なり合い、秋を迎えます。