ひゅうまん京都 寄稿文2006年11月

小さな火をくべるように。

岡田健司


11月に入りました。みなさんお体に変わりはないですか。

  地方自治体のよる自立支援法の意見書が再び相次いでいます。三重県議会、長野県議会、そして京都府/市議会による充実と改善を求める内容です。これまでに何らかの軽減策をした、あるいは検討してきた自治体からの要望書です。そこに示されたものは、軽減策をしてもなおサービス利用が制限される、利用の手控えが起こる、法の理念である地域生活支援が実現できない、といった現実に即応したものです。つまり、今でも軽減策を実施するのはきつい自治体が、これから続けていくことの困難さ、取り組むことの財政的な危うさを吐露したものである、そういう見方もできます。一方で、軽減策を実施しない自治体の「一律のサービスに軽減策はなじまない」「軽減策をするなら国の責任」「すでに国による軽減策はある」という主張を考えると、より一層国の軽減策は何の問題解決にもなっていない。単なる国の責任を地方に転嫁しただけであると再認識します。

  その真実を葬るための動きに躍起なのは厚生労働省です。先月23日に発表した実施状況調査によると、埼玉、埼玉、富山、岐阜、大阪、宮崎など14府県一割負担による利用を断念した割合はわずか0.39%の「極めて低い水準」で、三重など4県など利用の手控えは1.05%だった。いずれにしても各自治体による統計をもとにしており調査の実数把握はできていない、期間も定めていない、自治体の軽減策あるところ/ないところも含めて行いました、ということなのです。だから何がなんだか分かりません。本来この時期だと状況調査というものは、二次判定の程度区分や勘案事項の内実の把握であるはずだが利用者負担のみを行い、しかも対象範囲は程度区分のモデル事業の際に抽出実施された限定つきだとすれば、障害者団体のいう「全国の実態調査をすべきで、この調査は事実と異なる」という反論は的を得ているのではないでしょうか。

  先日、10月31日『出直してよ!「障害者自立支援法」大フォーラム』が行われました。全国から障害当事者、作業所職員、派遣事業所職員が東京につどい全4ヶ所での統一行動をするというもので、当日霞ヶ関周辺には15000人が参加しました。国会議員請願、都内デモ2つ、政党シンポジウムとそれぞれに分担しつつ、私は都内デモに回りました。いつもの馴染んだコースでないことが何か新たな感傷を生むのだとは思いますが、さまざまな主張を掲げたプラカードに囲まれて、連帯するシュプレヒコールを叫ぶ群集の中から官庁外の高層ビル群を眺めると、共鳴し合うことを拒むかのように聳え立つ外壁に吸い込まれそうになりながら、さりとてあのビルには1000人か2000人はいるんだったな、という意識がこの行動を否応なく現実のものとします。たぶんそんな気持ちを持つ人はいた訳で、それが私の仲間だったということも面白いのですが、東京駅周辺たしか八重洲口のバスターミナルに差し掛かったとき、1人の車イスユーザーがデモ隊のゆく歩道とは離れ、1人ぐんぐんバス停に突入していきます。もっと前で、もっと私たちのやることを見て、というアピールでしょう。バスを待つ人々の前にのぼりが大きくはためきます。が、バスターミナルなのでバスも相手にしなければなりません。轢かれそうです。ぶつかりそうです。二、三人介助者が彼に駆け寄りますが、焦れば焦るほど彼の歩行もフニャフニャでハラハラドキドキ。だけど勢いだけは良かったと彼の行動を称えます。

  私の目の前にあるもの、全てが現実で、それがでも大切で、変わることも変えることも、変わらないことも変えられないことも、その一つひとつが小さな火だろう、そう思ったりします。