ひゅうまん京都 寄稿文2007年3月
みなさん、2ヵ月ぶりでございます。お元気ですか。私は元気にしています。先月号は編集者Kさんに無理を言い、2月10日ラボール京都で行われた「貧困と格差をなくすつどい」での発言要旨を載せていただきました。Kさんには何かとお世話になっておりますが、井上編集長の休養中、私のお尻をひっぱ叩いていただき何とかこの号を迎えております。時には大事な休養日を棒にふらせるなんてこともありましたが、執筆者をやさしく成長させるという編集者魂がこの「ひゅうまん京都」には引き継がれているようです。
さて、自立支援法は、この間の経過を言いますと、政府与党が1200億(1年は400億)の軽減策を実施したことにより、各自治体ではその案内と申請申し込みが始まっています。ぜひ申請して活用していきましょう。折りしも、2月6日の朝日新聞朝刊では「障害者1600人、施設利用中止」との見出しで、自己負担増による施設利用の中止と抑制が進んでいる数字が明るみになり対策を迫られる格好になってもいたのです。いずれにしてもサービスを使っている人だけのお話なので、自立したいと思う人がその背景にはもっといてその人たちがどんなサービスがいるかを考えるための対策はまったく取る気はないというのが今回の補正予算です。応益負担の原理は断固として撤回しないのがその証拠ではないでしょうか。どちらも立たずという混迷した事態に行政は陥っています。そもそもクリエイティブじゃない人たちが作った障害者福祉だと言い切っても良いでしょう。
実態が制度を変えていくという現象は、クリエイティブじゃない人たちが目指した方向を断念させる契機にもなっています。そう、介護保険との統合の見送りも視野に入ってきたというのが役人の間にまことしやかに囁かれてています。障害程度区分の聞き取り調査をあれほど型どおり進めた矛盾もさることながら、ゆりかごから墓場まですべての世代で支えあう福祉サービスの財源を保険的な発想で議論していたことがそもそも間違っていたので、どうも立ち行かなくなったというのが本音です。あれだけ大きな制度を作ってしまったので吸収なんて簡単だと思っていたらそうでもなかった。障害者なめんなよ、と言いたいところですが、そういうところの話ではなくてそんな所得も払えるものもない。自分たちの作った制度の欠点を垣間見た結果だと思います。勉強しなおしなさい、役人。
ただ、ないないと思っていたら統合されてしまったということがないようにチェックは必要ですよね。引き続き悪さしないように見張りましょう。そう思っていた矢先、とうの安倍さん悪さをしそうです。所信表明演説でのお話ですが、彼の発想には格差社会の是正はチャレンジできる環境の創設でよいらしく、障害者福祉の問題は福祉という枠組みではもう取り扱われないということも分かってきました。どういうことかと言いますと、障害者よ税金納める主体になりなさい。だから働きなさい。働く者食うべからず。生きるべからず。でも働く人にはちょっと救いの手をさしのべましょう。でも働かない人はそのままでいなさい。そういう論法で来るんですね。いわゆるワークフェアですよね。所得保障を得ることと就労を引き換えにしようというお話です。私の立場を述べておきますと、これまでお話してきたことの中に、そんなことは一切書いていませんので断固反対です。すべてのワークフェアに対しては反対します。生きることと就労は別です。まずどんなことがあっても生きるための所得保障がなされなければなりません。障害者が一人前に自立することは働くことだと思う人、大変なことになりますよ。