ひゅうまん京都 寄稿文2016年1月

岡田健司


  まさか年末年始の韓国旅行の計画で起こったことが、昨年の締めを飾ることになろうとは思いもしませんでした。そんな電動車椅子ユーザーにはよくある話で。

  みなさんご存知の「じゃらん」ですぐ良い旅行プランが見つかったのでした。ホテルはコリアナホテルというソウル市役所などが周辺にあり、ソウル最大のパワースポットである景福宮にも大変近いホテルで、航空機はチェジュ航空(LCC=格安航空)です。インターネットで旅行の手配をされる方が少ないかもしれませんが手順はこうです。とあるプランに申し込みます。予算によってホテルや航空機はある程度変更ができます。申し込み後、じゃらん(コールセンター)が特別配慮事項を追ってメールで聞いてきます。そこで電動車椅子ユーザーは電動車椅子の奥行き・高さ・幅を、また航空会社の受付カウンターで航空会社が手配する手動車椅子に乗り移れるかどうか?飛行機のドアサイドから座席まで歩けるか?等々を確認されていきます。そういった情報をじゃらんは航空会社に伝えさらに航空会社の求めに応じてじゃらんが必要な追加情報を聞いてくるといったやりとりが複数回行われるのです。

  今回問題になったのは、電動車椅子の高さ・重さ・バッテリーの種類でした。LCCは客単価を低く設定している分たくさんフライトし多くの客が搭乗できるように座席がなされており、その分荷物を預ける貨物室が狭くなっている作りが多いようです。それでチェジュ航空がそう言うものですから、試しにシートとシャーシの部分を分解できるかやってみたらできました。けど空港でインパクト(電動ドリルみたいなもの)をだして汗水垂らして解体している姿を想像してみてこれが年末年始に旅行する客の姿か?と疑問がよぎります。まあ、これで重さ・高さはクリアしていよいよバッテリー問題です。現在では他の航空会社(JALやANA等)であまり問題にならなくなってきましたが、従来は電動車椅子のウエットタイプのバッテリーは搭乗拒否の対象でした。ちなみに簡易電動車椅子にはドライタイプ、大型の電動車椅子にはウエットとドライの両タイプがあり主はウエットタイプです。で、何が問題なのか?以前、液漏れが原因で飛行機の底に穴が開く事態が起こったそうで(硫酸系の液体なので)、最悪引火する危険もあったとか。それはいまでもそうなんですが、しかしすでに漏れないように防漏型になっており密封が施されています。それを勉強した航空会社は搭乗OKになっていて、それは条約や条例あるいはICAO(国際民間航空機関)の取り決めに基づきそれを遵守することが決まっているからです。それがどういうことかチェジュ航空ではそれが通らない。

  差別解消法が今後施行されますから周知していただきたいのは、こうした事例がある場合正確にことの経緯と差別の態様を記しておくことが大切です。そして必要に応じて差別事例を報告することが大切です。今回、私は国土交通省の航空局に電話をかけ報告しました。担当者は「これは問題」で「国交省電動車椅子ガイドライン」もクリアしており「ウエットタイプのシールドバッテリーが搭乗できないという規則書の明示にも欠けて」いるということで指導すると返答されました。それを受けて、後日チェジュ航空大阪支社にも電話をかけてあらためてどのように問題を捉えているか確認すると、国際線担当の方は韓国にある本社にも報告をし改善をしてくれるよう伝えたが現時点では貨物内の未整備で搭載できないことに恐縮し、今後改善できるよう善処すると答えました。その人は真摯な方でしたが、本社は韓国当局の指導があったにもかかわらず改善を未だしていない状態だったそうです。おそらく窓口で同じように断っていたことが常態化していたか、こんなことが問題にすらなっていなかったか。

  ただこれだけではありません。私は今回手動車椅子で妻に押してもらいながら旅行できましたがそれが不可能な人はどうなるでしょうか?航空券の手配は幾つかのルートがありインターネットでの代金決済システムは利用者が搭乗できないなどを知るまでの間に済んでいる場合があります。もしキャンセルすればキャンセル料の支払いはどうなりますか?私の場合キャンセルしていればお客様負担と言われました。キャンセルするのはこちらではないでしょう?