同志社大学講演2005年12月11日 同志社大学
障害者自立支援法--何が、どう変わる?
みなさん、こんにちは。
これからは私もふくめた6人の方が、自立支援法の内容・活用・改善すべき点などについて述べていきますが、私はまず自立支援法における「新しい利用手続き」のお話をし たいと思います。
※5つのサービスと利用のあれこれ
自立支援法はサービス内容に応じて5つに分けられます。1つ目は食事や入浴の介護サービス。2つ目は生活しやすく働きやすくの訓練サービス。3つ目は障害による医療サー ビス。4つ目は車いすや杖の補装具サービス。5つ目は相談と援助の地域生活サービス。1〜4のサービスは国と都道府県と市町村、5のサービスは市町村が行います。
では、それぞれのサービスについての利用手続きを大まかに見てみましょう。
→介護サービスです。介護サービスとは従来のホームヘルプ・デイサービス・ショートステイ・グループホームなどでのサービスを意味します。これを介護給付と呼びます。これらのサービスを使っている心当たりのある方、支援法では以下のように利用手続きしてください。まず相談支援事業者か市町村に「使います!」と言わなければなりませんが、とにかくそれで本人の意向調査が始まります。本人は106点にわたる質問に答えれば良いので簡単に済みます。調査員は調査結果をコンピューター入力して「介護はいらん」から「めっちゃ介護がいる」のどれにあたるかを判断させます。これが第一回目の判定と言われます。食事や入浴の介護サービスを利用する場合には第二回目の判定があり、二回目の判定はコンピュータがだした結果を本人かかりつけのお医者さんの意見書と本人の状態なども含めてお医者さんや大学の教授などが見直していきます。これが第二回目の判定と言われます。一回目と二回目のあとに、あらためて相談支援事業者か市町村が本人の意向、生活環境、活動状況を見て、聞いて、この人には食事の介護がいるのか、入浴に介護がいるのかを決めていくことになります。ちなみにこの流れとよく似た介護保険では30日以内に決まるそうです。
→訓練サービスです。訓練サービスとは従来の更生施設・授産施設・福祉工場などでの生活と働くためのサービスを意味します。これを訓練等給付と呼びます。これらのサービスを使っている心当たりのある方、支援法では以下のように利用手続きしてください。相談支援事業者か市町村に「使います!」と言ったら、106点にわたる質問を調査員に答えてください。介護サービスと同じく調査結果をコンピューターに入力して「訓練いらん」から「めっちゃ訓練いる」のどれにあたるかを判断させます。が同じなのはここまでです。第一回目の判定が終われば、第2回目の判定はなく、相談支援事業者か市町村が本人の意向、生活環境、活動状況を見て、聞いて、とりあえず生活していくための訓練メニュー、働いていくための訓練メニューが決まります。とりあえずと言うのはこの決定がお試し期間のもので、本当に必要なメニューはお試し期間のなかで効果などの評価を踏まえて決まるからです。
→医療サービスです。医療サービスとは従来の精神障害者の通院治療に関する医療(精神通院公費)、18歳以上の身体障害者に対する更正医療、18歳未満の障害児等に対する育成医療などを意味します。これを自立支援医療と呼びます。これらのサービスを使っている心当たりのある方、支援法では以下のような利用手続きになります。精神障害を持っている方が通院した場合、医療費の5%は自己負担でした。これからは18歳以上で身体障害を持っている人も、18歳未満で障害を持っている児童も、医療費の1割を自己負担しなければなりません。更生医療で例を挙げましょう。これまでのとおり、医療費は自己負担限度額から公費負担医療の自己負担額を差し引いた分を公費として支払われます。これを高額療養費と呼びます。人工透析を受けている腎臓に病気のある人が月28万円の医療費の場合、収入が年間80万円までなら自己負担は2500円です。ただ、高額療養費には負担限度額(7万2300円ですが)がもうけてあってそれを自己負担額が越えると事実上公費対象外になってしまい、いちど窓口で高額なお金を支払うことになります。心臓手術などの高額な医療費がかかる場合には、自己負担額と高額療養費分の立替払いをしなくてはなりません。
→補装具サービスです。補装具サービスとは従来の補装具(車いす・義肢・補聴器)などの作成・修理のためのサービスを意味します。これらが必要であれば市町村に「使います!」と言ってください。ただし、使う際には1割の負担がいることも知っておきましょう。
必要になる場合も1割負担、修理する場合にも1割負担です。
→地域生活サービスです。地域生活サービスとは従来から地域生活に必要であったサービスを市町村と都道府県が主体的に行うことを意味します。具体的に見ていきましょう。これまで支援費で使っていたガイドヘルプ(移動介護)は地域生活サービスです。また、手話通訳・要約筆記をする人の派遣や研修もそうです。福祉ホームも、日常生活用具(移動用リフト・聴覚障害者用情報受信装置・電気式のタン吸引機)も市町村の地域生活サービスです。都道府県での地域生活サービスは介護をする人、ケア・マネージャーの研修、視聴覚障害を持つ人のための介護者派遣などがあります。これらのサービスを使っている心当たりのある方は、支援法では以下のような利用手続きになります。移動介護を使うと仮定しましょう。市町村に「使います!」と言います。4つ答えが返ってくると想像しておいてください。「そういうものはしておりません」「わかりましたが、介護を使った分だけあなたがお金を支払ってください」「わかわりましたが、介護を使った分これだけはあなたが負担してください」「わかりました。」−以上のどれかです。また日常生活用具であれば、わたしはタンの吸引機が絶対必要で手放せませんが、購入と修理に自分のお金から支払わなければならないだろうと思っています。
※サービスの活用あれこれ1
以上みてきた5つのサービスに共通するのは「負担」があるということでしたね。負担ということに着目してどのように活用していけば良いのか、を、お話しましょう。
→介護サービスです。どれくらい支払わなければならないか、についておさらいしましょう。市民税を払っている家の人は40,200円(一般)です。市民税を払っていない家の人で収入が年間300万円までの人は24,600円(低所得2)です。市民税を払っていない家の人で収入が年間80万までの人は15,000円(低所得1)です。生活保護の家の人は0円です。どれだけ使っても負担の限度額があるのが特徴なので、思いっきり使いましょう。失敬。そうは問屋がおろしませんでしたね。それで、ざっと自分の負担額を確認します。でも注意してください。負担するのはあくまでその世帯です。本人の収入が80万円まででも、市民税を払っている収入300万円より多いお父さんやお母さんのお家に住んでいれば、40,200円になります。そのお家に住んでいる人が同じく障害を持っていた場合、二人とも障害基礎年金1級だとすると一人24,600円ですがその負担を合算することはできます。つまり49,200円ではなく軽減されます。また、社会福祉法人を窓口として介護サービスを利用する場合、お家にあるお金が350万円より少なければ利用料は半分安くなります。これも収入が年間80万円までのお家から300万円までのお家に限っての軽減なので、心当たりのある方はやってみても良いかもしれません。
→訓練サービスです。介護サービスと同じです。ただし、食費は実費負担となります。訓練サービスの負担によって食費も払えないという場合には、負担は軽減できます。
→医療サービスです。先ほどもお話しましたが、精神通院公費・更生医療・育成医療ともに1割負担/医療費にかかった10%です。その家の収入が670万円より多い人は20,000円です。その家の収入が670万円までで240万円より多い場合で、市民税を払っていて所得税は払っていない人は5,000円、で、市民税を払っていて所得税を30万円より少なく払っている人は10,000円になります。市民税を払っていない家の人で収入が年間300万円までの人は5,000円です。市民税を払っていない家の人で収入が年間80万までの人は2,500円です。生活保護の家の人は0円です。このように言うと、自己負担には上限があるように思われますが、先ほども言いましたように、高額療養費には負担限度額(7万2300円ですが)がもうけてあってそれを自己負担額が越えると事実上公費対象外になってしまい、いちど窓口で高額なお金を支払うことになります。結局は病院に行けば行くほど負担は増える仕組みなので、上限というものはないでしょう。さらに入院したときの食費1日780円かかることになります。
→補装具サービスです。先ほどお話したとおりです。負担は1割ですが、使った分だけ1割をお支払ください。
→地域生活サービスです。これも同じです。
※サービス活用あれこれ2
大まかにお話してきました。利用のスタートラインに立ったとします。ではどのように使っていくか、について介護サービスと訓練サービスについてのみポイントを挙げてみます。
→介護サービスです。第一のポイントは調査員が106点にわたる質問をした際におとずれます。あなたはできるかできないかという質問なので、ちょっと無理すればできるのであれば、できませんと答えましょう。できるが普通ではありません。できないが普通です。第二のポイントがおとずれるのは調査員があなたの意向を聞くときです。聞かなければ聞くようにと話してください。介護の必要性などあなたの言葉は特記事項として記載されます。これは二回目の判定のときにお医者さんや大学の教授が活用しなければなりません。第三のポイントは決定が出たときに不服がある場合、都道府県に対して異議申し立てをすることです。すぐにです。負担については世帯の事情により異なりますが、しかし自己負担を軽減する方法を活用することは必要になります。
→訓練サービスです。介護サービスとおなじになります。ただ二回目の判定がないので、第一のポイントと第二のポイントが大事になります。生活と働くための訓練が必要であると強く主張してください。また、とりあえずの決定がでたあと、お試し期間の評価やあなたの意向の聞き取りをもとにしてほんとうの決定がでます。だから第三のポイントはここです。その際「こんな生活は嫌だ」「こんな訓練をしたいんだ」としっかり伝えましょう。決定が出た後不服がある場合は都道府県に異議申し立てします。第四のポイントです。
お話を終わらせていただきます。ありがとうございました。