街頭宣伝2009年7月20日
「障害者自立支援法」コメント
障害者自立支援法は2006年4月に施行されました。今年は、三年目の見直し時期にあたります。この法律の施行によって自己負担の導入、介護サービスの抑制、作業所・授産所ばなれ等、さまざまな問題が引き起こりました。障害者とその家族・介護労働者・施設関係者・有識者らが注視するなか、この法律の存在意義があらためて問われています。地域で安心して暮らせることを目的とした法律ですが、それは実現されてきたのでしょうか?
自立支援法の前、障害者福祉サービスは支援費制度でした。そのサービス利用をしている障害者のうち18%が生活保護世帯、77%収入が年金だけの世帯で、障害者の95%は低所得者層です。応益負担の導入によって、生活保護世帯を除く低所得者層に対しおおよそ1万円から3万円の負担増となりました。
例えば、食事・トイレ・入浴・外出等生きるために必要な行為にお金が必要です。また、通所施設で一般就労を目指さそうと訓練しながら働くということもそうです。さらに、施設入所の人は施設利用料、いわゆるホテルコストと呼ばれる食費・光熱費・人件費どがあります。この自己負担増によって、福祉施設の収入は激減しました。障害者が施設を利用した分だけしか収入が入らないため、施設の収入は前年比10%から40%減っています。福祉労働者に対する賃金の抑制が進み、深刻な人材不足が進んでいます。
自立支援法が成立するときから懸念されてきたことがありました。所得がない。働き口がない。住むところによってサービス格差が広がる。いずれにしても、こうした問題はここ何年間かの障害者福祉が取り組んできた、取り組もうとしていた課題となんら変わるところがないと言えます。
障害者福祉の問題は、いまこの国が推し進める社会保障費を含む歳出の削減を徹底してやっていく方向に沿ったものではないでしょうか。医療・介護・年金等の社会保障費は自然増分だけで毎年増えますが、小泉内閣は02年(当初は3千億)から段階的に削減し、7年間で1兆6200億にも上る大幅削減で医療難民、介護難民を生み出したのです。そういった事態は、生活保護の申請拒否、介護保険の実費負担、非正規雇用の劣悪な労働実態など、これら社会問題とされる事態に繋がることとして記憶に新しく残っています。
私たちは、この法律が障害者の自立を支援することのない、部類の悪法であることを繰り返し訴えてきました。応益負担は、人が生きるために必要な行為に負担を強いるものですが、導入の過程では「障害者も人としての権利に見合う義務を果たせ」という極論まで噴出しています。しかし、社会保障費削減の大合唱をもとに行われた改正を考えると、応益負担とは仕組まれた痛み分けに過ぎないのであり、多くの人にとってよくない福祉が築かれただけに過ぎません。